オーグ営業日誌・訪問記
常連さんのサイト訪問記|第1回
常連さんのサイト訪問記は、誰かのサイトを勝手に採点する記事ではありません。文さんが、あるお客さんのサイトを訪ね、その人が大切にしている工夫を静かに書き留める読みものです。第1回に訪ねたのは、喫茶オーグの常連――刺繍作家の千歳さん(架空の人物です)が、去年からひとりで続けている小さなポートフォリオサイトでした。
訪ねる前に、帽子を取る
外のサイトを紹介するとき、文さんはまず相手に断りを入れます。載せていいURLはどこまでか、画面の写真を使ってよいか、どんな文脈で紹介するのか、あとで消したくなったらどこへ連絡すればよいか。サイトには、作品も、写真も、その人の連絡先も置かれています。良いと思ったからといって、黙って持ち帰るのは訪問ではなく、のぞき見になってしまう。
千歳さんは「散らかっているところも含めてなら」と笑って迎えてくれました。だから今回は、褒めるための言葉も、直したほうがよいと感じたところも、本人が読み返して嫌な気持ちにならない書き方だけを選びます。訪問記は批評の場ではなく、続けている人の工夫を分けてもらう場所だからです。
上手さより、続け方を見る
千歳さんのサイトは、最新の流行に沿った派手なものではありません。トップには、いま受けられる依頼が受付中かどうかだけが、大きく一行で書いてありました。「これが無いと、問い合わせが来るたびに同じ説明をすることになるので」。続けるための工夫は、たいてい、こういう地味な一行に宿ります。
作品一覧は、点数を絞って並べてありました。全部を見せるより、いま見てほしい数点に絞る。プロフィールは長すぎず、「何をする人か」と「どこまで受けるか」が、二段落で分かる。更新日は小さく、けれど確かに置かれている。飾りの多さではなく、迷わせない配慮の細やかさが、このサイトの居心地を作っていました。
千歳さんに聞いた、三つのこと
なぜこのサイトを作ったのか。「SNSは流れていくけれど、作品は流したくなかったから」。続けるために決めていることは何か。「月に一度、受付の一行だけは必ず見直すこと。他が更新できなくても、そこだけは」。最初に作ってよかったページは。「プロフィールより先に、問い合わせページを作ったこと。来てくれた人を、待たせずに済むので」。
答えはどれも短いものでした。けれど短い言葉の中にこそ、そのサイトの続け方が見えます。立派な機能を足すことより、自分が無理なく守れる約束を一つ決めておくこと。訪問記で持ち帰りたいのは、いつもそういう小さな設計でした。
持ち帰った、自分の店への宿題
店に戻る道すがら、文さんは手帳に三つだけメモしました。受付状況を一行で示すこと。見せる作品は絞ること。問い合わせへの道を、迷わせないこと。どれも千歳さんの真似ではなく、自分のサイトでも試せる形に置き換えたものです。訪問記は物語でありながら、読者が自分の店へ戻るための小さな案内板でもあります。
もしあなたが誰かの良いサイトに出会ったら、そっくり真似する必要はありません。入口の言葉、プロフィールの長さ、写真の枚数、リンクの数。小さな判断を一つずつ見ていくと、自分のサイトで試したいことも、一つずつ見えてきます。次回は、また別の常連さんの店先で、静かに帽子を取るところから始めます。